内縁関係の財産分与

本日は,「内縁の相手から一方的に関係を解消された場合でも,離婚の場合と同じように,相手方に財産分与を請求することができるか」について少しお話ししたいと思います。

1 離婚に伴う財産分与とは

離婚に伴う財産分与とは,夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を離婚に際して分与することをいいます(民法768条,771条)。

そして,財産分与は,①婚姻中の夫婦財産の清算としての性格,②離婚後の扶養としての性格,③精神的苦痛に対する慰謝料としての性格があるといわれています。

財産分与の額は,婚姻期間中の一切の事情を考慮して決められます。

判例も,「当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも含め,財産分与の額及び方法を定めることができる」としています(最判昭53.11.14)。

また,上述のように,「財産分与に慰謝料の性格」がありますが,財産分与してしまったからといって,後から慰謝料が請求できなくなるわけではありません。

財産分与を受けた後でも,財産分与が損害賠償の要素を含めた趣旨とは解されない場合や,その額・方法において十分に精神的苦痛が賠償されていない時には,財産分与とは別に,慰謝料の請求ができるとされています(最判昭46.7.23)。

2 内縁関係を解消した場合,財産分与を請求することができるのか

では,婚姻関係ではなく内縁関係だった場合,内縁の相手から一方的に関係を解消された場合でも,財産分与を請求することができるのでしょうか。

(1)内縁とは

まず,「内縁」とは,婚姻の意思を持ち,共同生活を営んでいるが,婚姻の届出をしていない事実上の夫婦関係のことをいいます。

この場合,「婚姻の意思」を持ち,共同生活を営んでいることが重要であり,単に共同生活を営んでいるだけで,婚姻の意思を持たない「同棲」とは区別されます。そして,内縁の有無はケースバイケースで判断していくことになります。

(2)内縁関係の財産分与

そして,裁判例では,

「財産分与については,財産分与は現に存した夫婦共同生活関係を最終的に規整するものであり、これによって直接第三者の権利に影響を及ぼすものではないから、内縁についてもこれを認めるのが相当である」として,内縁関係にも財産分与について規定した民法768条の類推適用を認めています(昭和38年6月19日/広島高等裁判所/第三部/決定)。

つまり,内縁関係にある者は,婚姻関係に準じた法的保護を受けることができ,内縁の相手方が一方的に関係を解消した場合にも,離婚の場合と同様に財産分与や慰謝料請求を認めているのです。

なお,相手方が一方的に内縁関係を解消したのではなく,相手方が死亡したため内縁関係が終了した場合は,残された者について,内縁関係にとどまる限り相続人とはならず,相手方が遺した財産について分与を求めることはできないとしています(最判平12.3.10)。ご注意ください。

3 まとめ

以上のように,たとえ内縁関係であっても,財産分与を請求していける場合があります。

「結婚届は出していないから・・・」「法律上の夫婦ではなかったから・・・」と泣き寝入りすることなく,ご自身の権利はしっかりと主張していきましょう。