離婚届不受理申出書

前回まで2回に渡って,離婚の種類についてお話しさせて頂きました。

離婚にはどのような種類があり,それぞれどのような手続きが必要かお話しさせて頂きましたが,相手が離婚を急いでいる場合や,養育費や財産分与などの交渉が煩わしくなった場合等,離婚さえできればと,相手方があなたに勝手に離婚届を出してしまう場合もあります。離婚成立後でも養育費や財産分与の交渉は可能ですが,相手の目的であった離婚が果たされた後では,相手が交渉に非協力的になったり,養育費や財産分与の支払から極力逃れようとする場合も想定できます。

離婚届は,戸籍謄本や,証人計4人の署名・捺印が必要で基本的には二人で提出する婚姻届と違い,離婚届に押す印鑑は三文判でも問題がなく,印鑑証明も不要です。また,夫婦揃って役所に顔を出す必要もないため,記された筆跡が本人のものかどうかの調査も行われません。あなたが不受理届書の存在を知らなかった場合や,不受理届書を提出するより先に,相手に勝手に離婚届を提出された場合でも,離婚届が役所で受理されると形式的には離婚が成立してしまいます。

形式的にでも離婚が成立すると,あなたの戸籍に離婚の事実が記載され,記載されてしまった事実の訂正や抹消にはかなりの手間と時間を要します。

離婚無効調停

一度成立してしまった離婚を取り消すためには,家庭裁判所に離婚無効の調停を申し立てる必要があります。離婚が無効であることを確認するためには,あなたに離婚意思がなかったことを証明する必要があります。

この場合,相手方において,あなたに離婚意思がないことに同意すれば手続はスムーズですが,逆に「あなたが離婚に同意していた」と相手方が主張した場合,家庭裁判所に対して離婚が無効であるとの確認を求める訴訟を提起しなければなりません。

判決の結果,離婚の無効が確定すると,1ヶ月以内に役所の戸籍係へ戸籍の記載内容訂正を審判または判決で証明された謄本を証拠とし,申請が可能となます。そして,ようやくあなたの戸籍から離婚の記載が抹消されることになります。そのため,相手が離婚届を勝手に出してしまう疑いがあるような場合はもちろんのこと,そのような兆候がない場合であっても,念の為に離婚届不受理申出書を提出しておくという選択肢があります。

申出先

離婚届不受理申出書の提出先は,基本的に届出人の本籍がある市区町村役所となっています。しかし,住居地など本籍地以外の市区町村役場に提出も可能です。

有効期限

以前は,不受理届書の有効期限は最長6ヶ月でした。しかし,法改正によりその期間が廃止されたことによって,無期限で不受理期間が続くこととなりました。つまり,提出した不受理届書を取り下げるまでは無期限で有効です。

不受理届の取下げ

不受理届書を提出してから,夫婦間の話し合いにより両者が離婚に同意した場合,不受理届書を提出した本人が離婚届を提出するのであれば,不受理届書は取り下げたとみなされてその離婚届は受理されます。

それ以外は,申請書の提出を行った役所に行き,「取り下げ用の申請用紙」に必要事項を記載して窓口に提出することになります。

勝手に離婚届を出すと,罰せられるおそれがある。

離婚届を勝手に偽造して提出すると,有印私文書偽造罪(刑法159条1項),偽造公文書行使罪(刑法161条1項)が成立するおそれがあります。

また,相手の離婚意思に反して,離婚届を提出することにより戸籍に離婚の記載がされることになるので,役所で保管されている戸籍簿の情報に嘘の記載をさせる公正証書原本不実記載罪(刑法157条1項)が成立するおそれもあります。

くれぐれも相手の意思に反して離婚届を提出することがないようご注意ください。

まとめ

一度受理された離婚届を覆すことは多大な苦労を要してしまいます。後で後悔しないためにも,少しでも不安があれば,離婚届不受理申出書の提出を離婚協議,離婚調停等に合わせて考えてみてもいいかもしれません。不安な方は、弁護士に相談してみることをおすすめします。