内容証明郵便の出し方・役割(前編)

内容証明郵便を出したい!

お金を貸した相手に返済を請求したい時や,契約を解除したい時などには,自分自身で書面を作成した書面を内容証明郵便にて出すことが出来ます。

今回は前編・後編に分け,ご自身でもできる内容証明の書き方についてご紹介させて頂きます。

1 内容証明郵便とは

内容証明郵便とは,郵便サービスの1つで,郵便を出した内容や発送日,相手が受け取った日付等を郵便局が証明するサービスです。

2 内容証明郵便が利用される主なケース

(1)契約の解除を通知する場合

契約の解除は口頭で伝えることができますが,その場合確実に伝えたという証拠が残りません。そのため,後になって契約の解除をした,していないという紛争に発展しかねません。

そのような紛争を避けるために,内容証明郵便を使って契約解除の通知をし,相手方に到達したと確実に証明しておくことが必要となります。

(2)貸したお金の返済を請求する場合

お金を貸した場合,借用書を交わさずに簡単な覚書ですませる場合も多いです。そのような場合,借用書がないことを理由に,後から貸金でなく贈与であるなど相手方に主張されかねません。

そこで,覚書を基礎とした貸金の返還請求書を内容証明郵便で送付すると,もはや覚書の存在を知らないと言えなくなるという効果があり,相手方から贈与だと主張されることを防ぎます。

(3)債権譲渡を通知する場合

債権譲渡は,「確定日付ある書面」によってしなければなりません。債権を譲渡したという通知がいつなされたかということは,債権の譲受人が複数いる場合に対抗要件として重要な意味を持ちます。

そのため,「確定日付ある書面」は配達証明付きの内容証明郵便で行われることが望ましいです。

(4)債権を放棄する場合

債権を放棄する場合,債権を放棄した事実を税務署に対して証明することが必要です。

そこで,債権放棄についての通知書を内容証明郵便で出しておくと,公的な証拠となります。

(5)訪問販売の契約をクーリングオフする場合

クーリングオフの通知は,契約書を受け取った日から8日以内に発信する必要があります。ここで重要なのは,8日以内に相手方に到達している必要はないということです。

内容証明郵便にしておくと,解約の通知が所定の期間内に発信されたことを確実に証明できるため,通知の到達をめぐる後々の紛争解決を避けることができます。

(6)時効消滅を止める場合

時効を中断させる方法には,裁判上の請求(訴訟・支払督促など)や債務者の承認などがありますが,裁判外の請求(催告)もその一つです。 この催告は,口頭で行われても,普通郵便によって行われても良いのですが,証拠を残すために内容証明郵便が使われます。

ただし,この催告は,催告後6ヶ月以内に裁判上に時効中断の訴えを提起しなければ時効は中断しなかったことになるので注意が必要です。

3 内容証明郵便のメリット

内容証明郵便には文書の内容が公的に証明される,発信の日時が証明されるというメリットがあります。また,相手方に出す書面,自身の控えの書面の他に郵便局で保管する書面を作成し提出し,郵便局で5年間保管されるため,自身の保管用の控えをなくしても困りません。

その他,内容証明郵便には下記のようなメリットがあります。

(1)心理的圧迫・事実上の強制の効果があること

内容証明郵便は,郵便局長の名義による証明文言と証明年月日が記載された書面が書留で受取人の元に届きます。そのため,普段そのような書面を受け取ることに慣れていない人にとってみると,突然そのような書面が届くことによって困惑したり,嫌な気持ちになったりします。

また,内容証明郵便には,「場合によっては裁判も辞さない」という差出人の強い意思が読み取れるため,書面を受け取った相手に対する心理的なプレッシャーを与える効果があります。

たとえば,貸金の支払いを請求する内容証明郵便を債務者に送った場合,心理的圧迫を与えられた債務者が支払いに応じたり,不安になった債務者から交渉の申し入れや回答通知などを引き出すことが期待できます。

(2)証拠づくりや相手方の出方を図ることができる

例えば,人にお金を貸したのに,借用書やお金を貸したという証拠が何も残っていない場合があります。その場合,たとえ口頭による督促を何度行っても,証拠が残らず,訴訟などに訴えにくいという実情があります。

そのような場合,内容証明郵便にて「○○万円を返済せよ」と予め相手方に返済を迫ると,相手方は心理的なプレッシャーが与えられたことにより,「返済に応じる」旨や「返済を待ってくれ」等の返答をすることが期待できます。そうすると,訴訟になった場合,相手方のこのような返答をもって,債務の存在を相手方が認めた証拠として裁判所に提出することが可能になります。

(3)停滞していた交渉等の進展

差出人があえて内容証明郵便を送ることで,相手方に対し差出人の強固な意思・態度を示すことができ,その結果,停滞していた交渉が進展するきっかけにもなります。

3 内容証明郵便のデメリット

内容証明郵便にはもちろんメリットもありますが,デメリットもあります。

(1)形式や使用文字の制限

内容証明郵便で送る書面は日本語で書かれていなければならず,英語などの外国語は固有名詞にしか使えません。また,1枚に書ける行数や文字数にも制限があります(形式面については,内容証明郵便を出す後編をご参考になさって下さい)。

(2)内容証明文書以外の書面の同封

普通郵便と異なり,内容の証明を希望する書面以外の資料の同封はできません。そのため,資料の送付必要な場合は別途資料の送付が必要です。

(3)書き間違いや不用意な記載があっても撤回できない

内容証明郵便は,一度書面を出してしまうと,書面の内容を撤回できません。そのため,内容証明郵便に請求金額を少なく書いてしまったり,不用意に自身に不利な記載をすると,相手方に有利な証拠として利用される恐れがあります。

また,相手方に心理的な圧迫を与える効果を狙いすぎるあまり,表現自体が脅迫的なものになってしまう恐れがあります。その場合,脅迫罪あるいは恐喝罪の構成要件に該当してしまい,内容証明郵便は犯罪を証明するための有力な証拠として提出される恐れもありますので注意が必要です。

4 まとめ

内容証明郵便の効力を遺憾なく発揮させるためには,自身の請求内容に即した書面を作成することが必要です。法律効果を発生させるためにはどのような記載が必要か分からない,書面は作成してみたが,記入漏れや問題点がないか心配という方は,弁護士に書面の作成又はチェックをお願いしてみてはいかかでしょうか。