婚姻から生じるお金の話~婚姻費用~

これまで主に離婚や離婚に基づくお金の話を中心にお話しさせて頂きました。今回は,婚姻から生じるお金の話,婚姻費用についてお話しさせて頂きます。

婚姻費用とは

婚姻費用とは,夫婦が婚姻生活を営むために必要な一切の費用のことをいいます。具体的には,夫婦の衣食住の費用の他,日常の生活費,医療費,子どもの養育費,教育費,公共料金の費用などです。

 

・婚姻費用の性質

 一般的に扶養義務は,

①生活保持義務,すなわち自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務と,

②生活扶助義務,すなわち自分の生活を犠牲にしない程度で被扶養者の最低限の生活扶助を行う義務とに分けられます。

そのうち,婚姻費用分担義務は①生活保持義務という性質を有しており,また,過去の生活を維持することは原則的にあり得ないため,①の義務の他に定期義務という側面があります。

 

・養育費との違い

 婚姻費用と養育費は似ているようですが,養育費は離婚成立後に発生する費用であるのに対し,婚姻費用は離婚が成立するまでに発生する費用です。

離婚を決意してから実際に離婚が成立するまで時間がかかり,別居状態になることが多くあります。婚姻費用は,このような場合に,収入の多い方の配偶者(以下「義務者」といいます。)が収入の方の配偶者(以下「権利者」といいます。)に対して支払われるものです。

・婚姻費用はいつから請求できるか。

 実務では,具体的な婚姻費用分担義務は審判(又は合意)によって形成されます。その始期については,裁判所が合理的な裁量で決することができ,請求時以降とするのが多数です(東京高決平28.9.14など)。

請求については,調停又は審判の申立時だけでなく,その前に事実上の請求をしていればその事実上の請求時も含まれます。内容証明郵便をもって婚姻費用分担を求める意思を表明した場合には,その時期が始期となります(東京家審平27.8.13)。

・始期が請求時より遡る場合

 多くの審判が請求時説を採る理由は,請求以前に遡ることで義務者が一時的に支払うべき金額が多額になってしまうことに配慮してのことです。しかし,義務者が権利者が扶養を要する状態にあることを知りながら,その婚姻費用分担請求を妨げた場合や,別居に至る事情や義務者の収入あるいは資力から見て請求以前に遡って分担しても過酷といえず,その分担を免れることが著しく公平を害するような場合には,請求以前に遡って分担させることができます。

・終期

 婚姻費用の分担義務は,婚姻事態から生じるものであるから,婚姻の解消がその分担義務の終期ということになります。

 しかし,婚姻費用分担事件は夫婦が別居状態にあることが多く,将来円満に解決して同居に戻るか,あるいは離婚という形で婚姻関係が解消されることが予想されます。そこで,審判における婚姻費用分担の終期については,「離婚又は別居状態の解消まで」あるいは,「婚姻の解消又は別居の解消まで」などと表現されることが多いです。

 

婚姻関係が破綻している場合の婚姻費用等の分担義務

 例えば,妻が夫との離婚を決意し子どもを連れて実家へ帰った場合,食費や子どもの教育費等が必要となるので,離婚成立までに時間を要するような場合は,夫に対して婚姻費用を請求します。このような場合,夫側から「勝手に出て行ったのだから,支払う義務がない。」などと主張されることがあります。

しかし,このような場合でも,夫は妻に婚姻費用を支払わなければなりません。

すなわち,夫と妻は,それぞれが同程度の生活を送ることができるように,お互いを扶助する義務があります。婚姻費用分担は,この生活保持義務に基づくものであり,別居していたとしても,この義務はなくなりません。

なお,婚姻費用の額は,当事者が合意によって決めることができますが,何の基準もなしに,当事者が合意するのは難しいです。そこで,養育費と同様,額を算定するうえでの一般的な基準として,裁判所が作った算定表があります。 

下記算定表をご覧ください。

http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf

 

有責配偶者の婚姻費用分担請求の可否

 例えば,不貞行為を行った妻が子どもを連れて別居したような場合,夫が婚姻費用を支払うべきかが問題となります。このような場合,妻は貞操義務に反しているので,婚姻費用の請求を認めるのは不当なように思えます。

しかし,不貞行為を行ったか否かについて,争いがある場合もあります。また,妻が一方的に別居した場合,例えば夫から暴力を受けて別居したなど妻にも言い分がある場合もあります。そのような場合には,婚姻費用を請求できると考えるべきです。

ただし,妻が自分に有責性があったことを認めている場合などは,妻の生活費について負担させるべきではありません。制限されることもあると考えて良いでしょう,

この場合,子どもの養育費相当分のみを認める方法が考えられます。

 

まとめ

 やむを得ない事由で別居した場合など,婚姻費用について合意がない,話がまとまらない場合が想定されます。そのような場合に,いつからどの範囲で婚姻費用が請求できるのか,弁護士に相談してみてもいいかもしれません。