離婚と養育費②養育費の算定

前回は離婚の際の養育費についてお話いたしました。

今回は,話し合いにまとまらなかった場合,具体的にどの程度支払ってもらえるかにつきお話しさせて頂きます。

1 養育費としてもらえる金額

まずは,夫婦(代理人)間で話し合いをし,離婚協議で決まらなければ離婚調停において金額や支払方法を話し合うことになります。もし,調停で話し合いをしても決着がつかないときは,離婚審判ないし離婚訴訟の中で,裁判官に決めてもらうことになります。

2 養育費を決める具体的な計算方法

(1)義務者(支払う側),権利者(もらう側)の基礎収入を認定する。

※総収入から,所得税等の公租公課,職業日,住居費,医療費等の特別経費を差し引いた金額

もっとも,基礎収入の認定を簡略化するため,税法等や統計資料等に基づいて推計される標準的な割合を総収入に掛けて,基礎収入を算出します。この割合は高額所得者ほど高くなります。

(給与所得者の場合)基礎収入=総収入×0,34~0,42

(自営業者の場合) 基礎収入=総収入×0,47~0,52

(2)子の生活費の算出

 算定表においては,収入が多く子と暮らしていない義務者が,子と暮らしていると仮定して養育費を計算します。つまり,義務者のほうが権利者よりも高収入である前提ですが,これには理由があります。収入の少ない権利者の水準で養育費を計算してしまうと,どうしても金額は低くなってしまうのですが,これでは生活保持義務の理念に沿いません。そのため,子と暮らす権利者ではなく,収入の多い義務者が子と暮らしていると仮定して養育費を計算します。

ア 子の生活費の計算は指数を使う

義務者と子をそれぞれ指数を使って表します。指数は子の年齢で異なり,成人である親を100とした場合に,14歳以下を55,15歳以上を90とします。

イ 14歳以下の子1人なら,義務者100+子55=155となり,全体が155で,そのうち子が55なので,子の生活費は次の式で求められます。

子の生活費=義務者の基礎収入×(55÷155)

(3)義務者の負担分を認定する。

子の生活費が求められたとして,その金額は父母で負担すべき養育費の合計を意味します。したがって,義務者がいくら負担すべきか別途計算しなくてはなりません。義務者がいくら負担すべきかは,義務者と権利者の収入に応じなければならないので,両者の収入から負担率を次のように計算します。

ア 義務者の負担率=義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)

子の生活費に義務者の負担率を掛けて12で割れば,月額の養育費が求められます。

イ 義務者の養育費負担額(月額)=子の生活費×義務者の負担率÷12

3 養育費算定表による算定

上記の計算方法以外に,養育費算定表と呼ばれるものがあります。養育費算定表は統計数値を利用して,一定の計算式を作り,これに基づいて,権利者・義務者の収入,子の人数,年齢に応じて,標準的な婚姻費用や養育費を算出できるようにしたものです。実務においても養育費算定表を用いて金額を算出することも多いです。

算定表につきましては,婚姻費用についての記事をご参照ください。

4 養育費算定表の金額以上はもらえないのか

もちろん,話し合いで合意ができれば,養育費算定表の金額以上をもらえることができます。しかし,話し合いがまとまらない場合には,養育費算定表において考慮されていない特別な事情があることを裁判官へ説得的に主張することが必要になります。

たとえば,子どもが私立学校に通うケースで考えると,養育費算定表では,公立中学校・公立高等学校の教育費を考慮して計算しています。そのため,私立学校の学費などの費用は考慮されていません。そこで,義務者が私立学校への進学を承諾している等,義務者の収入や資産・学歴からみて義務者に私立学校の学費を負担させるのが妥当だと考えられる事情を説明し,「特別な事情があるので,養育費を加算してください」と主張することになります。

5 養育費の増額・減額

養育費について取り決めをした後に,事情が変わった場合,養育費の増減額の請求をすることができます。たとえば,子どもが大きな病気をして入院したとか,大学に進学したなどという事情により,あとから子どもの生活に多額の費用がかかる事情が発生した場合,養育費の増額変更が認められることがあります。

他方で,養育費を受け取る権利を有する親の収入が増加したとか,養育費の支払い義務を負っている親が再婚して新たに子どもをもうけたような場合,養育費が減額されることが多いでしょう。これらの場合,養育費の変更を求める調停を申し立てることが通常です

6 まとめ

養育費がいくらもらえるかについては,上記計算式や,養育費算定表を参考にするといいでしょう。また,実際に算定された養育費以上の金額がもらえる事情もありますが,どのような事情が増額事由になるのかについては,専門的な判断が必要となりますので,弁護士への相談をおすすめします。