婚前契約書の意義

こんにちは。師走の寒さが日に日に増してきましたね。12月は今年1年を振り返り、来年の準備をする大切な季節でもありますし、同時に、クリスマスに向けて華やかなイベントが目白押しの季節でもあります。そんなクリスマスムードの中、結婚について現実的に考える段階に入るカップルも多いかもしれません。そこで、本日は、婚前契約書について、少しお話ししたいと思います。

1 婚前契約書とは

 婚前契約書とは、別名「プレナップ」とも呼ばれ、夫婦共有財産の範囲を厳密に決める傾向のあるヨーロッパなどの一部の文化圏では、広く行われています。

 実際に結婚し、共同生活を始めてみると、結婚前には見えなかった相手の嫌なところばかり見えてきた、ということがありがちです。具体的には家事の分担や、子供の教育方法、親との同居、介護、夫婦の財産の管理等、配偶者の浮気など、問題は多岐に渡ります。

 これらの諸問題については、もちろん現実の生活の中で生じたときにその都度話し合う必要があります。しかし、問題が起きてから初めて話し合うのではなく、結婚前に法的拘束力のある覚書を取り交わすことで、より結婚生活に対して真摯に取り組む覚悟ができます。

 そして、契約内容を吟味することは、客観的に自分と相手を見つめ直す機会にもなります。

2 婚前契約書に盛り込めない内容

(1)公序良俗に反する内容

 婚前契約書の内容は、公序良俗に反しない限り、基本的にどんな内容でも盛り込むことができます。

 公序良俗に反する内容とはどんなものかというと、例えば、「今の奥さんと離婚して、私達は結婚する」といった内容です。このような契約は倫理秩序に反するものとして、公序良俗違反となります。

 また、財産秩序に反する内容、自由・人権を侵害する内容も公序良俗違反となります。例えば、どちらかが浮気をした場合のペナルティーを定める場合においても、上記の点に反しないよう注意する必要があります。

(2)扶養義務に反する内容

 扶養義務は法律で定められた義務であり、直系血族と兄弟姉妹、特別な事情がある場合は3親等内の親族も扶養義務の対象となります(民法877条1項、2項)。したがって、それに反する内容を定めることはできません。

 例えば、「私たち夫婦は親の面倒を見ない」、「子供の面倒を見ない」等がこれに当たります。

3 婚前契約書の意義 

 結婚前や、婚約時に締結した契約は、法律上は、他人間における契約と同様に扱われ、原則として契約をどちらか一方から取消すことはできません。

 対して、婚姻中に夫婦でした契約は、民法754条により、いつでも夫婦の一方から取り消すことができます。夫婦間の問題は、できるだけ夫婦間で解決することが望ましいと考えられているからです。したがって、婚姻後に詳しい取り決めをしても、契約書の内容や同意書の内容を、夫婦間においては、いつでも一方的に取消すことができるのです。

 ただし、この規定は正常な夫婦関係が育まれていることを前提としており、実質的に夫婦関係が破綻している場合には適用されません。夫婦関係が破綻した場合には、もはや契約を取り消せないとするのが判例の立場です(最判昭和42年2月2日)。実質的に夫婦関係が破綻した状態であると、もはや他人関係に近いと見なされ、契約した内容を取消すことができないものと解されます。

また、婚姻の届出前に締結する契約として、「夫婦財産契約」があります(民法755条)。夫婦財産契約は、夫婦間における財産の帰属や、結婚生活から生ずる費用の分担などにつき、法定財産制と異なる内容の夫婦財産契約を自由に締結できます。そして、その内容を登記すれば、第三者にも対抗でき(民法756条)、婚姻の届出をした後は、原則として変更できません(民法758条)。

婚前契約書と併せて検討してみてはいかがでしょうか。